昨夜、寝る前に何気なくラジオの聞き逃し配信を開いた。
耳に飛び込んできたのは、葛飾北斎の話だった。
彼は生涯で30を超える名前を持ち、改名のたびに古い名を弟子に譲ったという。
弟子はその名を掲げて活動を続け、北斎は新しい名でまた歩き始める。
さらに驚いたのは、名前だけでなく作風まで大胆に変えていたことだ。
積み上げた技術や評価を手放し、まるで新しい画家として生まれ変わるかのように次の表現へ向かう。
守るより壊すことを選び、そのたびに新しい景色を手に入れていったのだろう。
一方で、私たちはしばしば名前に縛られる。
私は三代目社長として会社を継いだ。
先代が築いた名と歴史は、盾にもなれば重荷にもなる。
会社の看板を守る責任と、同時に新しい形へ進化させる役割の狭間で、日々揺れている。
組織を継ぐというのは、単に経営の椅子に座ることではない。
過去を受け取りながら未来をつくる、大胆かつ繊細な作業だ。
硬直化した仕組みを見直し、ときには思い切って壊すことも必要になる。
変化は批判や不安を呼ぶが、それでも新しい風を入れなければ組織は次の段階に進めない。
壊す・手放すというのは勇気がいる。
けれど、それは整理収納の世界でも最も大切な鉄則だ。
不要なものを手放すからこそ、本当に大切なものが見えてくる。
北斎が何度も名を捨て、新たな自分を描いたように、組織も人も、そうしてこそ輝きを増すのだと思う。
もし今の自分や組織に停滞を感じるなら、勇気を持って解体に踏み出してみる。
その先にこそ、まだ見ぬ自分と、まだ見ぬ組織の姿が待っている。