日曜日の午後、車の窓から妻が珍しくカメラを構えた。
田んぼの向こう、海から流れてくる雲に太陽が遮られ、その隙間から光が強く差し込んでいる。
「すごいね」
助手席のその声が、いつもより弾んでいた。
最近は休みも仕事をしに会社に行ってしまう。
気づけば三連休もほとんど会社。
新しいプロジェクトのことを考えていると、時間がいくらあっても足りない。
そんな日々の中で、妻を誘って羽黒の「つむぎ」さんへ出かけた。
先日のセミナーでご一緒したご縁もあって、ずっと気になっていたお店だ。
三種のお汁が自慢というお蕎麦は、聞いていた通り、香りも余韻も見事だった。
食後は、ハシゴでお茶。甘いものを少し。
そのあとスーパーや無印、ドラッグストアをひとまわり。
特別な予定も、目的もない。
けれど、そんな「なんでもない時間」が、いまの自分には一番ありがたい。
子どもたちが小さかった頃は、外出ひとつにも作戦が必要で、
二人でこうして歩くことなんて、ほとんどなかったように思う。
家に帰って、妻のスマホをのぞくと、
さっきの夕陽が一枚、そこにあった。