先日、経営の勉強会で「アンゾフのマトリックス」という考え方を学んだ。
会社の成長戦略を、
①市場浸透
②商品開発
③市場開拓
④多角化
の4つに分類するというものだ。
図にするとシンプルなのだが、眺めているうちに、経営の本質が見えてくる。
私たちはつい、「新しいこと」に目が向く。
新規事業。
新サービス。
新しい市場。
経営者であればなおさらだろう。
何か面白いことはないか。
新しい収益源はないか。
そう考えること自体は悪くない。
しかし、この理論の面白いところは、「どこへ行くか」だけでなく、「どこへ行かないか」も示してくれることだ。
特に④の多角化。
新しい商品を、新しい市場へ投入する。
夢はある。
しかし同時に、最もリスクが高い。
商品も分からない。
お客様も分からない。
言ってみれば、地図もコンパスも持たずに航海へ出るようなものだ。
一方で②の商品開発や③の市場開拓は、すでに持っている強みを活かせる。
技術。
経験。
人脈。
信用。
そうした積み重ねを土台にして前へ進むことができる。
考えてみれば当たり前の話だ。
野球が得意な人が、まずは野球を伸ばす。
料理が得意な人が、まずは料理で勝負する。
それなのに会社になると、なぜか急に全く違う競技に挑戦したくなる。
アンゾフのマトリックスは、その暴走しがちな気持ちを静かに引き戻してくれる。
「あなたの強みは何ですか?」
と問いかけてくるのである。
経営の仕事は、新しいことを始めることだと思っていた。
しかし最近は少し違う気がしている。
むしろ、
「やらないことを決める」
ことの方が大切なのかもしれない。
限られた人員。
限られた時間。
限られた資金。
だからこそ、自分たちの強みが生きる場所に集中する。
遠回りに見えて、それが一番確実な成長への道なのだろう。
アンゾフのマトリックスは、事業を増やすための理論ではない。
自分たちの立ち位置を見失わないための地図なのだと思う。